彫刻家　吉田　直　の世界

  小学生の頃「空き缶で動物をつくろう」とする図工のテーマが計画され、私は翌日から道端で公園で一生懸命、缶を拾い集めた。
  数日後、空き缶でいっぱいの紙袋を両手に下げ班登校する日がやってきた。友達にも分けられる。私は得意気だった。
  しかし、登校中紙袋の底が抜け、大量の空き缶は周囲に散乱する。…子供達は笑い声と共に次々と空き缶を踏み潰し始めた。
  悔しさと哀しみに、幼い私の心は震えた。
  しかしそんな想いとは裏腹に、私も人一倍笑い転げながら空き缶を踏み潰し続けていた…。
  私には妙な照れ症、不器用な面がある。子供の頃からこの性癖には度々泣かされつつも、今や作品制作においては大切な要素となってしまっている。
  何故ならこの性癖こそ、私の作品に宿る「鍵」になっているからです。
  全像日本の伝統技法「寄木造り」にて制作。着彩には西洋技法も取り入れた人物彫像です。

（2002年 岩崎ミュージアムプレスより）