技法 寄せ木造り
寄せ木造りとは、頭体部を2つ以上の材木を寄せ合わせて、制作する技法である。粗彫りの段階でばらして内部を内刳りする (空洞化する) ことで、
木の割れ、狂いを止められる 像の軽量化 動的な彫刻表現を可能にするなどの利点がある。これは、平安時代に完成されたとされる日本彫刻の伝統技法である。木の寄せ方には様々なやり方があるが、吉田 直の場合、独自の工夫も取り入れ、頭部別材彫り → 後頭部より内刳り、フタをし →体部正中 2 材寄せ → 内刳り →左右上腕部寄せ → (場合により) 内刳り →左右肘部寄せ → (場合により) 内刳り →左右手部寄せと、基本的には計 9 材寄せから制作している。
< 頭部制作 > 頭部は別材から制作する。
頭部は仕上げの一歩手前で内部を内刳り (空洞化) している。
< 体部正中矧ぎ > 2 つの木材を中央で寄せる。
彫刻中はカスガイで固定しておく。
< 左右上腕部寄せ > 体部の粗彫りを進め、上腕部の木寄せに入る。
寄せ部は、ホゾで固定する。
< 左右肘部寄せ + 手部寄せ > 寄せた上腕部に肘部を寄せる。
手は別材にて制作しておく。
制作した手部を肘部に寄せる。
(手部の制作) 粗彫り段階での 9 材寄せ合わせ カスガイをはずし、各部をバラし、内刳り (空洞化) 行程へと進む。
< 内刳り行程 > 左図 - 体部内刳り
右図 - 上腕部内刳り
< 接着 > カスガイで止めていた体部を接着剤で圧着する。
接着部の強化のため、内部にカスガイを埋め込む場合もある。
< 仕上げ彫り > 各寄せ部の仕上げ彫りを進める。
< 着彩行程 >
< 目には樹脂を流し込む > 鎌倉時代の仏像は目に水晶をはめていた例が多い (玉眼)。これにより、眼の透明感や光沢を表現していた。
吉田 直は独自の工夫から、目の玉部をやや膨らませて彫刻して、そこに樹脂を流し込んでいる。
完成